桜華乱舞 〜蒼き月夜に永遠の誓いを〜







「着いたみたいね」



あれから約三十分ぐらい経った時、馬車が止まった。


音祢は立ち上がり、簾を手で上げると、左右に首を動かし外の様子を窺った。



「今日の任務がある場所は近いんだな」



多分馬車に乗って、一時間も経ってないはずだ。


私も音祢に近づき、外を見てみる。




「いいえ。ここは陽京から西に大分離れた月蘭(ツキラン)っていう所で、今日任務があるのはその中の一つの小さな村なの」



「だが、まだ一時間も経っていないぞ?」


「それはこの"瞬馬"のおかげよ」


「しゅんば?」


「瞬馬っていうのはね、聖石の力でそこらへんにいる馬と比べものにならないほどの速さを持った特別な馬のことよ。

瞬馬だったら五時間かかる所でも最速で二十分で行けるわ。

ここも普通の馬だったらざっと六時間はかかるわね」



「へぇ・・・」



そんなに速く駆けてるようには感じなかったが、音祢の言ってることは本当なんだろう。




そして、私は一足先に馬車から降りると、辺りを見回した。




古い木製の家並みがまだ東に傾く太陽に照らされ、影を作り、まだ朝早いからか外にいる人影は少ない。


だがどこからどう見ても、妖鬼が出るような不穏な空気は感じられない場所だった。



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