それでも、すき。


「…んっ、あ…、」


それから一週間後。

あたしたちは音楽室に居た。



「ちょ…っ、香椎くんっ!」

「……。」

「~っ!や、大和!」

「んー?」


軽快に外されてゆくボタン。

背中にピアノのひんやりとした冷たい感触。



「き、聞いてる!?」

「聞いてるよ。」


いやいや、絶対聞いてないじゃんっ!



実はいうと、あの大胆告白のせいであたしと香椎くんの関係は、あっという間に全校生徒に知れ渡ってしまった。

もちろん、自分がいけないんだけど。


元々、人に注目されるのが苦手なあたし。

でも、あれから香椎くんは学校でも人前でもベッタリで。


ただでさえ、香椎くんと居ると目立つのに

あたしの毎日は一気に騒がしくなった。



「別にいいじゃん。」

何か困る訳?と言われ、あたしは言葉に詰まる。


困る?って…
実際に困ってるんですーっ!



そんなあたしに、香椎くんは最後のボタンに手を掛け言った。


「とりあえず、いい加減ガマンの限界なんだけど。」


そっと首筋に顔を埋めて。






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