それでも、すき。


それは本当に
一瞬の出来事だった。

故に、自分でも何が起きたのかわからない。



気が付くと唇は塞がれ
あたしは香椎くんの上に跨ぐ体制になっていて。


「…っ、か、香椎くん…?」

自由になった唇で
たどたどしく名前を口にすると、香椎くんがあたしを見上げる視線が、どこか熱っぽい。



どうやら、この狭い空間で彼は器用にあたしを持ち上げたらしい。

すると、香椎くんの唇がゆっくりと動いた。



「…何か、したくなった。」

「……え?」

意味を理解する前に、後頭部を引き寄せられ、深く重なる唇。


そして、太ももに感じる指先の感触。

その時ようやく、香椎くんがこれからするであろう事、さっきの言葉の意味を理解した。



「ちょ…っ!やめ、」

「何で?」

「な、何でって…っん!」


抵抗も虚しく、肌に触れる唇があたしの理性を溶かしてゆく。


その反応を見て、香椎くんはあたしのメガネを外した。

二人の視界を遮るモノがなくなり、直にぶつかる視線。


「終わったよね?」

生理、と聞きながら
香椎くんはみつあみを解き、あたしの髪にキスをする。



――もう、逃げられない。



そう思った。




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