それでも、すき。
夏休み明けから始まったあたしたちの関係は、暑さが過ぎて秋が色濃くなった今でも続いてる。
“ゆずマーク”の書かれたノートも、音楽室での一時も。
『――柚果。』
きっと、香椎くんが飽きるまでこの関係は続くんだろう。
あたしのカラダが
必要なくなるまで――。
「…さむ、」
甘ったるい声が遠くなり、吹き付ける風が強さを増した。
反射的にワイシャツの上から腕をさすってみる。
でも、体を撫でる風の冷たさは変わらなくて。
真実を隠すダテメガネで、秋晴れの空を見上げた。
“恋”だと呼ぶには
あまりにもいびつで。
“好き”だと言うには
あまりにも近すぎる。
じゃあ、他に
何と呼べば相応しいのだろう。
恋人なんて程遠い。
けど、友達とは言えない。
…じゃあ、クラスメイト?
きっと、それも違う。
どれも近いようで遠くて。
「……バカだなぁ、本当。」
はらり、と落ちた木の葉は
きっと泣けないあたしの涙の代わり。