マジ恋
「大丈夫、だから…」
そんな栗城絢都をあたしは押しやるように立ち上がってパンパンと制服についた砂を払った。
栗城絢都も立ち上がると
「送ってく」
なんて、言ってきて
「…ぁ」
あたしは、断ろうと口を開く。
でも、さっきの出来事が頭を支配して言葉が出なかった。
もしかしたら、まだそこら辺に隠れてるかも…
なんて、考えちゃって…
足がすくんむ。
「ぉ…」
送って、ついそう言ってしまいそうになったとき。
「絢都ぉ〜?何しているのよぉ!!早くいきましょう」
って、大人の女の人の声がしたんだ。
そうだよ…
栗城は、女遊びが激しいんだった。
きっと…さっきの声の持ち主は、栗城の彼女さんとか?
もし、そうじゃなくても名前で呼んでいるんだもん。
きっと、親密な仲。
邪魔しちゃ悪いよね…
そう思いあたしは「送ってもらわなくても平気」なんて嘘をつくと
「じゃーね」
って、言って栗城に背を向けてしまった。
そのあと、あの時意地を張ったことに後悔しながら真っ暗な夜道を走って帰ったのだった。