未定
たどり着いたのは家からほど近い、古くて小さな神社だった。おばあちゃんの助言通り、体の思う通りに走りついたこの神社で、私は小さい頃毎日のようにここで遊んでいたことを思い出した。周りは木に覆われているかのように自然で溢れ、この緑に包まれた世界に来たら何故か幸せになれることを思い出した。

「何か、ヒントでも見つかれば・・・」

わずかな望みに期待を膨らませ、辺りをよく見回した。賽銭箱に五円玉を入れても神社を取り巻く木々を見ても小さな池の鯉に話しかけてもなにも感じない。一体何故ここまでも思い出せないのか。体が思い出すことを拒否しているかのように、幼いころの記憶が出てこない。私は少しがっかりしながらも神社の裏側に足を運ばせてみた。

「あっ!」

思わず声を出したのは、神社の裏にたたずむ小さな看板を目にしたからだ。

【この先私有地】

そう書かれた看板はボロボロという言葉がこの世で一番似合いそうなほどに、ボロボロだった。

「え?!?!?!」

よくよく看板を見ると、右端の下の方に

【なつやさいのきみとズッキーニのぼく】

と書かれている。

「これって!」

急に鼓動が激しく動きだした。この気持ちを表すならばドキドキ。そしてワクワク。ボロボロ看板の先には細い小道が続いている。私の足はためらうことなくその小道を進み始めた。進みながらも何かもやもやとした気持ちと嬉しくなるような気持がうずまいていた。

50メートルほど進み、小道を抜けたとき、全身の鳥肌が立った。そこだけに光が差し込んでいるかのように目の前のものにくぎ付けになっている自分を、どうすることもできなかった。自然とあふれ出てくる涙も、どうすることもできなかった。

目の前に現れたのは、古くて大きな洋館だった。
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