未定
ザーッザーッ
カチャッ―――
「やぁ、今日も食べてる?ボクの作った野菜たち。初めて君とあった日、よく覚えてるよ。ばあちゃんの畑で採った野菜たちを両手いっぱいにかかえてたボクの手がいきなり軽くなっていった。なぜなら君が正面からかぶりついてきたから。野菜がなくなっていく度に君とボクの距離も序々に近づいて・・・気づけばニガウリにオクラにトマト、カボチャとズッキーニとキュウリに・・・でもって、ボクの心まで喰いつくされてたんだ。君と過ごした日々はあっという間で、出会ったのが随分前に感じるよ。このひと夏、本当に楽しかった。夢のようだった。でも夏休みも終わる、ボクは帰らなきゃいけない。君が寂しくならないようにちゃんと葉書出すよ。ボクがもっと成長して、十年後にはきっとこの街に帰ってくる。それまでは君との約束の準備期間だ。この前君が言ってたあの場所へいこうよ。確か・・・」
ピンポーン
音を遮るかのようにチャイムが鳴った。
ガチャ
一度テープを止め玄関へと向かう。新聞屋のおばちゃんの集金だった。
「いつもありがとね。あれ?あんた泣いてるのかい?」
「え・・・?」
おばちゃんに言われ頬を触ると濡れている。気づかなかった・・・。
「あっ、私花粉症で目薬を10滴ぐらいさしちゃって あはは」
「・・・そうかい、お大事にね。若いうちは何事も経験よ。」
下手くそなウソにおばちゃんは変に何か察したのか肩をポンッと叩き
名言を残して出て行った。そんなおばちゃんの後姿に私もなぜか一礼し、急いでテープの元へと戻る。
「!!」
カセットテープが全てCDに変わっていた。
「なんで・・・?」
さっきの手書きのテープもCDになっていてもう聞くことができない。
なんだったの?あのテープ、あの場所ってどこ?
懐かしい気持ちになるのに、何も思い出せない自分がいた。
「とりあえず返事を書かなきゃ」
葉書を取り出しペンを走らす。