リベリティーファミリー
 父が予約をしていた店は、以前テレビで紹介されていたフランス料理の店で透以下の弟たちは口をポカンと開けて店の前に立っています。

「透、口開いてる」

 夏昼は透の後頭を軽く突いて注意を促しました。

「すごいね〜。ここテレビで出てたよ」

 あまり外食をしない遠坂家で、たまの外食、それがテレビ画面に映っている場所であれば、興奮は最高潮です。

 中に入ると、シックなモノトーンで統一していて、高級感が漂っています。入った途端、年少組は気後れしたのか固まってしまっています。

「こちらへどうぞ」

 席に案内され、父を上座に座らせ、父の前の席を開けてそれぞれの席に据わりました。勇獅と理生の間に夜昂が座り、その向いに透を挟んで、夏昼と朝想が座りました。

「父さん、今日は勇獅と理生の保育園探して来たから。空きが調度、二人分あるって言われたから、進行で決めてきた。家に、書類があるから判子だけ押しといて」

 夜昂は今日、来たばかりの弟たちのことを話しました。息子の手際の良さに父は頷くしかありません。

「保育園って、うちの学校の系列の、あそこ?」

 夏昼がたずねると夜昂は頷きました。保育園に預けられるのは勇獅と理生が最初なのではありません。夏昼以下の兄弟はみんな通っていました。

「夜昂、何から何まですまないな」

「仕方ねぇよ。父さんは仕事だし、苦手だろ?こういうの」

 父の性分を息子たちは理解しているのです。子どもたちに頼られも相談もない父は何処となく寂しいのでした。
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