リベリティーファミリー
「どうするの?歩くの?」

 透が手を繋いでいる朝想に聞きました。家までは歩いて二駅程あります。

「歩こうぜ。明日はみいんな部活も無いんだし。少しくらい遅くなっても良いだろ」

 夜昂は理生を背負うと先頭を切って歩き出しました。

「おんぶ〜」

 勇獅が夏昼に強請ると夏昼は後から抱き上げて肩車をしてあげました。喜ぶ声を上げる勇獅が落ちない様に注意しながら夜昂の背中を見て歩きます。

「また、期待はずれでしたね」

「最初から期待してねぇよ」

 美園のスーツや、話し方を見ていてキャリアウーマンなのだろうと予想を付きました。

「そう言うな。今は仕事してない人の方が珍しいんだから」

 夜昂は優しく二人を窘めました。

 夏昼と朝想は夜昂に聞こえない位の声で話を続けました。

「それに結婚したとしても、別居になると思いますよ。僕らの家庭事情を知っても、飲み込める人間はそうはいないでしょう。余程、器の大きい人じゃないとね」

「なかなか香澄母さんみたいな人っていないもんだな」

 香澄は夜昂を生んで、少しの間でしたが夏昼と朝想を育ててくれた遠坂家の母親だった人です。二人には彼女の記憶は余りありませんが、優しい手とぬくもり、石鹸のほのかな匂いは記憶に残っています。それが二人の母親の印象です。

「親はなくとも子は育つだな」

 諺を見事に体言していると夏昼は笑いました。実際には親はいますが、いない時間の方が多いのです。

「そうですね〜。僕はそれで良かったと思ってますよ」

「オレも」
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