リベリティーファミリー
年長の二人、夏昼と朝想は複雑な心境でした。

自分たちは、全く記憶のない頃にここに連れてこられました。なので、生みの親の顔を思い出すことはないのでホームシックにも感傷に浸ることもありませんでした。

透以下の弟と妹は母親の顔も声も知っています。何かがきっかけで、母が恋しくなるかもしれません。その時のことを考えると不憫でなりません。

「今日は、全員座敷で雑魚寝だ。夏昼、布団を移すのを手伝ってくれ」

「えっ?・・・はいよ」

突然、夜昂は夏昼にそう言いお茶漬けをかきこむと席を立ちました。夏昼は驚きながらも兄のあとに続きました。

兄の背中を見て、朝想と夏昼は兄がきっと自分たちの心情を察してくれたのだと思いました。

朝想は二人のお茶碗と自分のお茶碗、食べ終わった透のお茶碗を持って、流しに向かいました。

「大人なんて勝手な生き物だ」

自分を世に生み出した親は、勝手だといつも思っていました。朝想は、兄二人と同じく、自分の境遇を嘆いたことはありません。けれど、全てを受け入れがたいこともありました。何故、ただ生まれただけの自分たちは、どうしてこんなことになったのか知りたかったのです。

何故、自分たち兄弟が身勝手な大人たちに振り回されなくてはいけないのか。

それが朝想の中で渦巻いていました。

洗い物を置いたまま、流れる水の音だけが朝想には聞こえていました。





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