恋愛ゲーム
そう言った樹里の声は震えていて…
俺は、ただ呆然とした。
10年間、一緒にいたのに。
俺はこの時初めて、樹里の涙を見たんだ。
『だって…傷付けたのはあたし、なのに…
苦しかったのは…辛かったのは…慎吾の方、…だったのに…!』
…苦しかったよ。
すごく、ものすごく、辛かった。
でも――…
「…好きになって、ごめん。
迷惑かけて――ほんとにごめんな。
今まで、黙って側にいてくれたこと…感謝してる。
…ありがとな、樹里。
――…好きだったよ、ほんとに」
…これだけは、本当。
好きだった。
…大好きだったよ。
今は、過去にして言える。
樹里のこと、大好きだったって。
『…あ、たし…
慎吾に…ひどいことした…!
慎吾の気持ち、分かってたのに…利用したりしてっ…
っなのに…なのに…!』
小さく肩を震わして泣く樹里に。
目の前にいながら、俺は何もしてあげることが出来なくて。