恋愛ゲーム


そう言った樹里の声は震えていて…


俺は、ただ呆然とした。

10年間、一緒にいたのに。
俺はこの時初めて、樹里の涙を見たんだ。





『だって…傷付けたのはあたし、なのに…

苦しかったのは…辛かったのは…慎吾の方、…だったのに…!』





…苦しかったよ。
すごく、ものすごく、辛かった。

でも――…




「…好きになって、ごめん。
迷惑かけて――ほんとにごめんな。

今まで、黙って側にいてくれたこと…感謝してる。


…ありがとな、樹里。
――…好きだったよ、ほんとに」





…これだけは、本当。

好きだった。
…大好きだったよ。
今は、過去にして言える。


樹里のこと、大好きだったって。





『…あ、たし…

慎吾に…ひどいことした…!
慎吾の気持ち、分かってたのに…利用したりしてっ…


っなのに…なのに…!』





小さく肩を震わして泣く樹里に。
目の前にいながら、俺は何もしてあげることが出来なくて。


< 118 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop