恋愛ゲーム
その瞬間。
あたしの肩を掴んでいた先輩の手の力がゆるんだ。
ゆるんだと同時に、顔をしかめる。
「じゃあ、賭けてみる?」
そのままゆっくりとあたしの耳元へ唇を近付けて、先輩はそう囁いた。
「…え?」
「付き合ってみて、俺がアンタを落とせるかどうか。
もしくは、アンタが俺を落とせるか」
目の前で笑みを浮かべる男の人が、全く知らない人に思えてくる。
これは、本当に松下先輩…?
頭の中で、4ヵ月前の映像が、松下先輩のあの笑顔が、ぐるぐると回っている。
今、目の前にいるのは…誰?
「どうする?
それとも、やっぱり自信ない?」
…は?今、なんて言った?
“賭けてみる?”
“落とせるかどうか”
“自信ない?”
…どれだけふざけてるわけ?
「…っ賭けでも何でもしてやろうじゃない!
あたしは絶対、先輩みたいな人になんて落とされない!」