恋愛ゲーム
『え…』
俺の言葉に、ユカは顔に露骨に困惑した表情を浮かべた。
絡めていた腕がほどけて、弱々しく俺の制服の裾を掴んでいる。
『…なんで?
ユカのこと、嫌いになったの…?』
「…別に、そんなんじゃねえよ」
『じゃあ…っ』
何かを言いかけたユカの口を、指で押さえて言葉を遮る。
頭に浮かぶ、あの女の顔。
無性に、イライラした。
あの女以外にも、落とせる女はたくさんいる。
ゲームの相手は、いくらでもいた。
だけど―――…
『ねえ慎吾っ…』
「…うるせえな。
俺が相手してんのは、お前だけじゃねえんだよ。
それが嫌なら、もう俺んとこ来んじゃねえ」
傷付けることは分かってた。
それでも、言ってしまっていた。
途端に顔を真っ赤にしたユカは、目に涙を溜めて、俺に背を向け走って行った。
…頭の中に浮かぶのは、いつまで経ってもあの女―――井澤明菜の顔だった。