恋愛ゲーム


その中でも、さっきの声の主。

俺の目に入ってきたのは――…





「…アイツ」





―――井澤明菜。


さっき俺に見せた表情とは全く違う…笑顔だった。
井澤たちは、話しながら渡り廊下を通り過ぎて行った。


…俺にはあんな顔、見せてくれなかったのに。

あの状況じゃ当たり前と言えば当たり前だけど、そんな小さなことさえ気になってしまう。


でも、あの笑顔。
どこかで――…



“…良かったら名前、教えていただけませんか…!?”



…そうだ、思い出した。

あの時…いつだか忘れたけれど、保健室でケガの手当てをしてやった女だ。


いろいろあって、イライラしてて…
保健室で授業サボってた時、あの女が入ってきて…


なんかブツブツ呟いてたのがうるさくて、思わずベッドから出たんだっけ。


アイツ、俺を見た時一瞬ボーッと俺を見てきたから。
またか、って、正直うんざりした。


< 19 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop