恋愛ゲーム
その中でも、さっきの声の主。
俺の目に入ってきたのは――…
「…アイツ」
―――井澤明菜。
さっき俺に見せた表情とは全く違う…笑顔だった。
井澤たちは、話しながら渡り廊下を通り過ぎて行った。
…俺にはあんな顔、見せてくれなかったのに。
あの状況じゃ当たり前と言えば当たり前だけど、そんな小さなことさえ気になってしまう。
でも、あの笑顔。
どこかで――…
“…良かったら名前、教えていただけませんか…!?”
…そうだ、思い出した。
あの時…いつだか忘れたけれど、保健室でケガの手当てをしてやった女だ。
いろいろあって、イライラしてて…
保健室で授業サボってた時、あの女が入ってきて…
なんかブツブツ呟いてたのがうるさくて、思わずベッドから出たんだっけ。
アイツ、俺を見た時一瞬ボーッと俺を見てきたから。
またか、って、正直うんざりした。