恋愛ゲーム
だけどアイツは、井澤は――…
逆に、俺から離れようとした。
まるで俺を避けるみたいに、急いで立ち上がろうとしたから…
だからあの時、思わず手を伸ばした。その腕を、掴んだ。
俺を見て、態度を変えて媚びてくる女はたくさんいた。
だけどアイツは全く態度なんて変えなくて、俺の前でも飾らないでいてくれて…正直良いなって思った。
手当てが終わった後、名前を聞かれて答えた俺に向けられた、あの笑顔。
さっき見た笑顔と、全く変わってない。
俺はこんなにも変わってしまったのに、アイツはあの時から何一つ変わっていないんだ。
今の俺は、きっとあの時みたいに人に接することなんて出来ないだろう。
例えその相手が、井澤だとしても。
きっともう、井澤はあの時みたいな笑顔を俺には向けてくれないだろうから。
きっともう、軽蔑されるか、他の女みたいに媚びてくるようになるかどちらかだから。