恋愛ゲーム
「…なに、考えてんだ俺…」
俺はもう、あの時とは違う。
あの時みたいに笑顔を向けてもらいたいだなんて――…
そんな、無謀なこと。
もう、無理に決まってる。
だって、ゲームを始めたのは…俺だ。
俺は井澤のことを頭から振り払うように、ポケットに手を入れて、小さな紙袋を取り出した。
そのまま、反対のポケットから携帯を取り出して、アドレス帳を呼び出し通話ボタンを押す。
数回コール音がして、聞き慣れた声が受話器から聞こえた。
俺はもう、アイツとは違う…
アイツみたいにまっすぐに人と向き合うことなんて、屈託のない笑顔を向けられることなんて、もう…
「…もしもし、樹里?
俺だけど…ちょっと、時間ある?渡したいモンあるんだけど…」