恋愛ゲーム
「ごめん歩っ。
あたし授業が始まるまでの間、しばらくあっちにいるね!」
揉め事に巻き込まれるなんて、そんな面倒なことはまっぴらだ!
そう言ってあたしは、歩の陰に隠れて来た道をしゃがんだまま戻り始めた。
『ちょっと待って!』
ビクッ…!
突然の大きな怒鳴り声に、思わず足が止まって身体がビクリと揺れる。
そのままの状態で動けずにいると、後ろからだんだん足音が近付いて来た。
『アンタが井澤明菜だよね?』
って、顔までバレてる?
顔がひきつるのを必死に抑えながら、あたしは笑顔で振り返った。
「…あー、はい…まあ…」
先輩方も笑ってはいるけれど、声が刺々しいことから何を思われているのかは察しがついた。
…ああ。いたたまれない…
頑張って保っている笑顔が、だんだん歪んでいくのが分かる。