恋愛ゲーム


気付けばあたしは、その人に向かってそう言っていた。

少しの沈黙の後、その人はゆっくり振り返ると笑って口を開いた。





『3年の松下慎吾。

アンタさ、女なんだからケガの手当てくらい自分で出来るようになれよ?
俺、いつも保健室にいるわけじゃねえからな』





外見は、すごく苦手な感じで。

多分普通に廊下とかで出会ってたら、絶対に進んで関わろうとはしないと思った。


だけど、

だけど、本当に優しい人だった。


あたしはあれ以来、ずっと、ずっと松下先輩のことを見ているんだ。



松下先輩は、いつも笑顔で。

授業には出ていないのに、意外にすごく頭が良いこと。

走るのが速いこと。


…女の子から、人気があること。

だけど、今彼女はいないこと。


松下先輩に一目惚れしてから4ヵ月。
これが、先輩について分かったこと。


そして、今日。
4ヵ月片想いを続けて、やっと決意が固まったあたしは、ダメ元覚悟で松下先輩に告白することを決めた。


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