恋愛ゲーム
「明菜」
先輩が、何度も何度も…
あたしの名前を、呼ぶから。
「――…明菜」
先輩の手が伸びて、
そっとあたしの髪に触れた。
今度は、頬に触れて。
唇に、指を這わせた。
「…先、輩…?」
「だから、慎吾だって。
…慎吾って呼べよ」
そう言った先輩の手が、あたしの後頭部へと回る。
あたしの頭を自分の方へ引き寄せると同時に、自分自身も少し上体を起こして。
距離が、縮まる。
「…明菜」
どうしてだろう。
何度も何度も、先輩があたしの名前を呼ぶ。
その表情は、切なそうで、なぜかあたしまで泣きたくなって…
――どうしてだろう。
“愛しい”と、思ってしまった。
「せ、んぱ…っ近い…」
あたしの小さな抵抗なんて全く気にしないような素振りで、先輩は至近距離のままあたしの視線を追う。
何度反らしても、また視線を合わせられる。
「…なあ、明菜。
――慎吾って呼べよ」