恋愛ゲーム
…だけどほんとに、
この人があたしを?
あたしはそのまま座り込んだ状態で、その人の顔を見上げた。
だけどそんなあたしとは反対に、その人はキツい目であたしを見ると。
『…あんたが井澤明菜、だよね?』
「そう…ですけど…」
その人が近付いてくるにつれて、逆にあたしはだんだんと後ずさりしていく。
ずっと下がって、背中が体育館の壁についてしまったとき。
その人はあたしの目の前にしゃがみ込んで、口を開いた。
『松下慎吾。…知ってるよね?』
…なに?この雰囲気…
この前の、女の先輩たちに絡まれたときとは全く違って…
あたしはただ、その問いに黙って頷いた。
『あたしは安藤樹里[アンドウ ジュリ]。
慎吾の…“彼女”、だよ』
「…え」
その、瞬間。
今まで忘れてしまっていたかのように、足首と擦り剥いた膝のケガがズキッと痛んだ。