恋愛ゲーム


「――…樹里」





先輩が樹里さんの名前を呼ぶと、その肩が小さくビクリと揺れた。

…あたしも、少しびっくりした。



いつも笑ってる先輩の、こんなに低くて怖い声を聞いたのは…
多分、初めてだったから。





「…なあ、樹里。ここで何してんの?」



『あ…あたしはただ…っ!』



「…言い訳とか、いらねえから。
俺は今、ここで何してんの?って聞いてるんだけど」





松下先輩…?どうしたんだろう…
もしかして、…なにか怒って、る?





「俺のことなんて何も見てない樹里が、俺を語る資格なんてこれっぽっちもねえよな?

…よっぽど、
明菜の方が俺のこと理解しようとしてくれてるよ」





…あたしはただ、知りたかった。

先輩のことが、好きで、好きで。

この1週間の間だけでも良いから、先輩の側にいられる間だけで良かったから。


ただ、それだけで。





『…っな、によ…!
この子だって、ただの遊びのくせに…っ』


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