私は大事なそっくりさん
夕焼けが綺麗に輝き始めた。
近くの公園のベンチに座り、コンビニで買ったあったかい缶コーヒーを握り締めながら、涼さんは話し始めた。
「……一年前、俺の妹が亡くなったんだ」
妹が……
もしかして、
「さくら……さんですか? 」
「………なんで分かったの? 」
初めて会った時に、私の事を"さくら"って呼んでいたから……
「そうだったっけ? ごめんね、あの時はびっくりしてて……」
抱きしめられて、実は嬉しかったなんて言えないね。
「桜が亡くなったのは一年前、俺の中学の卒業式の日。俺は、卒業式を休んで病院にいたんだ」
確かめるようにそっと、でもはっきりした声で涼さんは続ける。
「あいつはずっと『お兄ちゃん、お兄ちゃん』ってうるさいやつだったんだ。俺が居ないとダメだとか、甘やかせ過ぎてたのかな? 」
「でも妹がいなくなって、俺を"お兄ちゃん"って呼ぶ声がなくなると、急に俺の周りが静かになっちゃったんだよ」
どうしてそこまで妹を大切にしていたのか、一人っ子の私には涼さんの気持ちが分からなかった。
というより、そんなに涼さんに想われている、さくらさんが羨ましかった。