恋人は専属執事様Ⅱ
お嬢様、休暇。

「淑乃様、連休のご予定はお決まりでしょうか?」
紅茶の御代わりを淹れながら藤臣さんに訊かれて、私は悪戦苦闘してた宿題から顔を上げてキョトンとした。
「連休…ですか?特に何も考えていませんでした……」
淑乃様らしいですねと笑いながら藤臣さんは言葉を続ける。
「淑乃様もまだ遊びたい盛りのお年頃ですし、わたくしから旦那様にお話しておきましょう。どこへ行かれたいか考えておいてください」
藤臣さんがいつもの優しい笑顔を見せるから、私も安心してお任せしてしまった。

藤臣さんには海外旅行を勧められたけど、情けないことに英語もままならない私は国内を強く希望した。
結局、松本家所有の離島の別荘で過ごすことになった。
お祖父さんから楽しんで来なさいとの言伝と共に、藤臣さんを始め沢山の人が身の回りのお世話役として同行することに。
これじゃお屋敷にいるのと変わりないと思ったけど……

自家用機で数時間、私は南方の離島に到着した。
抜けるような青空。
真っ白な砂浜にエメラルドグリーンの綺麗な海。
手前には美観を損ねないようにベージュを基調とした立派な洋館。
…ここは日本なの?
唖然とする私を何事もない素振りで藤臣さんが洋館へとエスコートしてくれた。
洋館に入ると
「お嬢様、お待ちしておりました」
と丁寧なお辞儀で迎えてくれたのは、4人の執事候補生のみんな。
…は?何でみんながここに?
連休中だよね?世の中GWだよね!?学園もお休みだよね?
「勉強熱心な執事候補生ばかりお選びになられたようでございますね。連休中もお嬢様にお仕えしたいと全員から申し出がございまして、旦那様も学園長もご承知でございます」
そう説明してくれた藤臣さんは言葉と裏腹に面白くなさそうな…
気のせいだよね?
藤臣さんにとっては彼らは、後輩であり生徒でもあるんだから。
私はこの洋館(勿論ここも松本家所有)に住み込みでこの島の管理をしてる中年の夫婦に手厚く迎えられた。
メイドさんに案内されたのは、お屋敷に負けず劣らず立派なお部屋。
「こちらが滞在中のお嬢様のお部屋になります。お召し物などは先に届きましたのでクローゼットなどに収納いたしました。必要な物がございましたら仰ってください。直ちにご用意いたします」
何か至れり尽くせりだなぁ…
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