恋人は専属執事様Ⅱ
お嬢様、苦悩。

お屋敷に戻ってから、私はずっと専属契約のことを考えていた。
初めは乗り気じゃなくて、デモンストレーションで印象に残った4人に試用期間を持ち掛けた。
無茶な条件を出して断られると思ったのに、全員が引き受けてくれた。
ぎこちなかった関係も、いつの間にか安心出来るものになった。
今ではあの4人がいない学園生活なんて、考えられないようになってしまった。
誰か1人なんて私には選べない……

長いようで短かった連休が終わって久々に登校した私は、二階堂さんをお茶会に招待した。
人払いをして、2人切りでバラの温室でお茶を飲みながら、私は告白されたこと以外全て話した。
私の話を黙って聞いてくれた二階堂さんが口を開いた。
「松本さんが悩まれるのも解りますけれど…他にも原因がおありなのでしょう?」
二階堂さんがニッコリと微笑み、ズイッと私の顔を覗き込む。
「告白されたのではありませんの?あの方たちから…」
思わず顔を上げて目を見張る私を見て
「やはりそうでしたのね」
と何故か嬉しそうに微笑んでる。
「あの方たちを見れば直ぐに判りますわ。松本さんのことになると人が変わったようになるのですもの…」
ふふ…と楽しそうに笑うと二階堂さんは
「でも肝心のあなたがこのようでは、あの方たちもお気の毒ですこと。もう高校生なのですから、好きな方がいらしてもおかしくないですのに…」
と言って、綺麗に整った眉を顰めた。
「二階堂さんは好きな人がいるんですか?」
何気なく訊いた積もりだったのに、二階堂さんはサッと顔を赤くして話してくれた。
「おりますわ…許婚ですけれど、子供の頃から憧れていた分家の従兄ですの」
いつもは小悪魔的で美人な二階堂さんが、今は恋する可愛らしい女の子になっている。
人を好きになるって素敵だな…
私にもいつかそんな時が来るのかな?
それよりも、いくら待つと言ってくれたからって、いつまでもお返事をしないのは失礼よね。
きっと想いを伝えるってすごく勇気が要ることだもの。
真剣な気持ちに私も応えたい。
お断りするにしても、ちゃんと誠意を以て応えたい。
私の表情から察したのか、二階堂さんが
「que sera,sera…ですわ。無理に決めようとなさらずに、自然にしていらっしゃればよろしいのよ」
と笑った。
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