恋人は専属執事様Ⅱ
とは言っても二階堂さんの言う通り、肝心の私の気持ちはどうなのかな?
自分でも分からない。
自然にと言っても…

「ボサッとしてるとコケるぞ」
グイッと腰に腕を回されて我に返る。
恒例のお散歩の途中だったのに、ついまた考え込んでしまった。
隣を歩く宝井さんが少しムッとした顔をしている。
「お散歩に付き合ってもらっているのに考え事をしてご免なさい…」
私が謝ると今度こそムッとした顔をした宝井さんが
「俺といるのに上の空とはいい度胸だな。俺のことしか考えられないようにしてやる」
と言って、私を押さえつけてキスをした。
強引に唇をこじ開けられ、舌を絡め取られる。
「ん…っふ…」
息も吐かせない激しいキスにクラクラする。
「お前は俺のものだ…俺のことだけ考えろ」
乱暴な言葉とは裏腹に、甘くしっとりと濡れたような甘い声で、宝井さんが優しく囁くように言う。
好きだと言われてるように錯覚してしまう。
「お前は俺が選んだ女だ。少しは自覚しろよ、淑乃」
宝井さんの言葉の意味が分からず見上げると、宝井さんの瞳が微かに揺れた。
ハーフにも見える綺麗に整った宝井さんの顔。
明るい茶色の瞳。
意思の強さを表すキリッとつり上がった眉。
スッと通った鼻筋。
キツく結ばれた薄い唇。
瞳と同じ色の軽くウェーブした柔らかそうな髪。
思わず見惚れる私に、憮然とした表情で宝井さんが言った。
「一度しか言わないからよく聞け。淑乃が好きだ…だからお前も俺のことだけ考えてろ」
お前もって…宝井さんは私のことだけ考えてくれているってこと?
どうしよう…嬉しいけどどうしよう…
まさか宝井さんまで私のことを好きだと言ってくれるなんて……
「ちゃんと聞いてんのか、淑乃?」
また考え込んでしまった私は、お仕置きと言われて宝井さんに激しいキスをされてしまった。
噛みつくような乱暴なキスなのに、大切に優しくしてもらっているようだった。

お屋敷に戻ってからも、宝井さんの言葉が耳から離れなかった。
宝井さんだけじゃない。
鷹護さん、河野さん、秋津君…
みんな学園の生徒たちが憧れる人なのに、どうして私みたいに取り柄のない平凡な女の子を?
好きになってもらえる要素が思い当たらない私は、悩むばかりだった。
その夜、私は高熱の為に寝込んでしまった。
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