恋人は専属執事様Ⅱ
放課後の第1体育館はいつもと違う雰囲気だった。
練習前に大勢の女子に囲まれた河野さんが、一人一人に甘い言葉を掛けていたから。
しかも、順番に専属契約を交わすことを匂わせることも言ったから、周囲から反感を買っていた。
「気にするな。あれが本来の河野だ」
私を気遣って鷹護さんが言ってくれたけど…
『やっぱり長続きしない奴だな』
『ああ、松本さんがお気の毒だ』
『父親が女に貢いで借金を作ったそうだから、息子は女に貢がせると言う訳か…』
『そんな奴が執事候補生の次席とは…執事候補生の成績には女子からの組織票でもあるのか?』
聞くに堪えない勝手な言葉に、私はカッとなり
「コソコソとなさってはっきりと仰れないお話など感心いたしません!根拠のない噂話などなさって恥ずかしくないのですか?河野さんはわたくしに誠心誠意を以て仕えてくれました。わたくしが戯れに河野さんをもう来ないようにしたのです。話題にお困りでしたら、わたくしのこの非道な行為をどうぞご自由に!」
一気に捲くし立てて、肩で息をした。
館内がシンとなる。
「俺の出る幕がなくなったな」
隣で鷹護さんが小声で言った。
鷹護さんの視線の先に河野さんがいた。
「お嬢…様…」
なんとも言えない複雑な表情で私を見つめる河野さんが、ゆっくりと歩いて私の前に立った。
「…河野さんに酷いことを言って、傷付けてご免なさい」
周りに聞こえないくらいの声で私は河野さんに謝った。
許してもらえなくても、謝らないよりはマシだと思った。
「やっぱりオレね、沢山の女の子よりお嬢1人の方がいいみたい…お嬢がいなくてすげぇ寂しかった」
眉尻を下げて河野さんが弱々しく言う。
「だったら離れるな。あんなところに1人で置き去りにして、何かあったらどうする?本来なら契約義務の不履行で謹慎処分だが…」
そこまで言うと、鷹護さんは私をチラッと見て続けた。
「今回は特別だ。こいつの泣き顔とさっきの啖呵に免じて…な」
赤面する私に河野さんが
「あー…クソッ!やっぱりお嬢は可愛いなー!」
なんて言うから、私の顔は益々赤くなった。
「こいつは元々可愛いが?何を今更」
と鷹護さんが真面目に答えるから、私はもうどうすれば良いのか分からなくなって俯いた。
練習前に大勢の女子に囲まれた河野さんが、一人一人に甘い言葉を掛けていたから。
しかも、順番に専属契約を交わすことを匂わせることも言ったから、周囲から反感を買っていた。
「気にするな。あれが本来の河野だ」
私を気遣って鷹護さんが言ってくれたけど…
『やっぱり長続きしない奴だな』
『ああ、松本さんがお気の毒だ』
『父親が女に貢いで借金を作ったそうだから、息子は女に貢がせると言う訳か…』
『そんな奴が執事候補生の次席とは…執事候補生の成績には女子からの組織票でもあるのか?』
聞くに堪えない勝手な言葉に、私はカッとなり
「コソコソとなさってはっきりと仰れないお話など感心いたしません!根拠のない噂話などなさって恥ずかしくないのですか?河野さんはわたくしに誠心誠意を以て仕えてくれました。わたくしが戯れに河野さんをもう来ないようにしたのです。話題にお困りでしたら、わたくしのこの非道な行為をどうぞご自由に!」
一気に捲くし立てて、肩で息をした。
館内がシンとなる。
「俺の出る幕がなくなったな」
隣で鷹護さんが小声で言った。
鷹護さんの視線の先に河野さんがいた。
「お嬢…様…」
なんとも言えない複雑な表情で私を見つめる河野さんが、ゆっくりと歩いて私の前に立った。
「…河野さんに酷いことを言って、傷付けてご免なさい」
周りに聞こえないくらいの声で私は河野さんに謝った。
許してもらえなくても、謝らないよりはマシだと思った。
「やっぱりオレね、沢山の女の子よりお嬢1人の方がいいみたい…お嬢がいなくてすげぇ寂しかった」
眉尻を下げて河野さんが弱々しく言う。
「だったら離れるな。あんなところに1人で置き去りにして、何かあったらどうする?本来なら契約義務の不履行で謹慎処分だが…」
そこまで言うと、鷹護さんは私をチラッと見て続けた。
「今回は特別だ。こいつの泣き顔とさっきの啖呵に免じて…な」
赤面する私に河野さんが
「あー…クソッ!やっぱりお嬢は可愛いなー!」
なんて言うから、私の顔は益々赤くなった。
「こいつは元々可愛いが?何を今更」
と鷹護さんが真面目に答えるから、私はもうどうすれば良いのか分からなくなって俯いた。