恋人は専属執事様Ⅱ
咎める口調の鷹護さんに、宝井さんはチッと舌打ちをして
「ちょっとした喧嘩をしていただけですけど、そこまで干渉されたくないですね」
とあくまで『カレカノ』のスタンスで通す積もりらしい。
「いい加減にしろ、宝井!彼女のことをどう思おうとそれはお前の自由だが、彼女の意思を無視して無理強いするな!」
あの鷹護さんが宝井さんの胸倉を掴み、今にも殴りかかりそうな剣幕で怒っている。
「優等生面なんてやめて、はっきり言えよ。好きな女に手を出されて面白くないって」
宝井さんが鷹護さんを睨み付けて挑発する。
当事者なのに蚊帳の外に追いやられた私が、仲裁に入ろうとしたら
「面白くないだと?生憎そんな生温い感情では済ませられない。お前を殺しても腹の虫は収まりそうにない」
後ろからでも分かる鷹護さんの殺気立った様子に、宝井さんが口角を上げて笑いながら
「アンタと意見が合うなんて思わなかったよ…俺もアンタをぶっ殺しても気が済まないね」
と鷹護さんの胸倉を掴んで言った。
暴力沙汰は停学処分になるんだよね?
どうしよう…
ペチン!
情けない音だけど、頭に血が上っている2人を正気に戻すには十分だったらしい。
私に頬を叩かれた鷹護さんと宝井さんが、驚いた表情で私を見る。
「喧嘩両成敗です!折角連休中に仲良くなれたのに、喧嘩なんてやめてください…」
毅然とした態度で言い始めたけど、最後には悲しくなって涙声になってしまった。
「…済まない。仲裁に入る積もりが、逆になってしまったな…」
宝井さんから手を離し、私の方に向かって謝る鷹護さん。
「俺は謝らない…淑乃は俺のものだ」
払いのけるように鷹護さんから手を離した宝井さんは、鷹護さんを睨み付けたままそう言って
「行くぞ、淑乃」
と私の腕を掴むと、校舎に向かって歩き出した。
引き摺られるように歩きながら振り返ると、鷹護さんが私の腕を掴む。
「このままお前をこいつと行かせられない」
グイッと私を引き寄せ抱き締める鷹護さんに、宝井さんが顔を顰め
「アンタだって淑乃の意思を無視して何してんだよ」
と不愉快そうに言う。
「暴行紛いをして反省しない奴を彼女に近付ける訳にはいかない」
険しい表情で鷹護さんと宝井さんが睨み合う。
もう連休中の関係には戻れないと感じた。
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