恋人は専属執事様Ⅱ
贅沢な悩みだと自分でも思う。
格好良くて身の回りのお世話もしてくれて私のことを好きだと言ってくれる人が5人もいるなんて。
他人事だったら選り取り見取りで羨ましいって思うだろうけど、自分のこととなるとそうは思えない。
自惚れている訳じゃなくて、みんなが本当に私のことを大切に思ってくれているのが分かったから……
どうしようって思うだけじゃ何の解決にもならないことも分かった。
だから今は私に出来ることから行動するって決めた。
…私に何が出来るのかは分からないけど、何もしないよりはマシだと思う。
先ずは鷹護さんにちゃんと謝らないと。
宝井さんとのことがあってからなんとなく気まずくて、2人切りになることを避けていたから。
今日は鷹護さんがお世話をしてくれる日だから、ちゃんと向き合わなきゃ。
そう決心してお昼休みに中庭へお散歩に行った。
「あの…鷹護さんに私…」
やっぱり緊張して上手く話せない。
出だしが肝心なのに……
スッと鷹護さんが腰を落として、私の目線に合わせてくれた。
「無理はしないでくれ。お前を困らせたくない…お前が望むなら会わないようにする」
声に張りのない鷹護さんの言葉に胸が締め付けられた。
「そんなことありません!私…どうすれば良いのか分からなくて、鷹護さんと2人切りになることを避けてました…そのことをちゃんと謝りたくて、それで……」
私の考えを伝えようと一生懸命になって話していると、鷹護さんが大きな手で私の口を塞いだ。
「避けられて当然のことをした。だからお前が謝る必要はない。お前はいつも人のことばかり考えて自分を責めるんだな…もっと甘えろと前に言ったが、少しは自分を甘やかせろ」
なんとも言えない表情でそう言うと、鷹護さんは手を離してから
「だが、こうしてまたお前と話せるとは…参ったな……言葉が出て来ない」
とその場にしゃがみ込んで片手で顔を覆ってしまった。
ど…どうしよう……
気に障ることは言ってない…よね?
思わず私も鷹護さんの前にしゃがみ込む。
綺麗に纏めて固められた真っ黒な髪が乱れ、しかも片手で顔を覆っているから表情は分からないけど…
乱れた髪から覗く鷹護さんの耳が真っ赤になっている。
……もしかして鷹護さん、照れているの?
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