恋人は専属執事様Ⅱ
午後から何故かご機嫌麗しい二階堂さんこと紗羅さんが、放課後に笑顔で私のところへ来て
「鷹護さん、少し淑乃さんをお借りしますわね。その間、佐伯のご指導をお願いしてもよろしいかしら?」
と言って、私はテラスへと強制連行された。
「さぁ淑乃さん、親友のわたくしに隠し事はなしですわよ?執事様と鷹護さんと何がありましたの?」
と瞳を輝かせて訊いて来た。
名探偵、侮り難し……
かと言って、私の気持ちだけなら構わないけど、2人の気持ちを勝手に話すのはどうかと思って悩んでいたら
「もう…じれったいですわね!今朝、執事様が貴女のことをお嬢様と呼んでいらしたでしょう?今までわたくしを牽制するように、わざとお名前で呼んでいらしたのにおかしいですわ。それに、覚悟を決められた殿方の目になっていらっしゃいましたもの。鷹護さんはお昼休みに戻られてから、今まで以上に貴女に対して過保護になっていらっしゃったわ。淑乃さんもギクシャクした雰囲気がなくなっていらっしゃるから、わたくしピンと来ましたのよ!」
と勝ち誇ったように言われ、私は紗羅さんの洞察力に驚くしかなかった。
てゆうか、それだけ分かっているなら私から話す必要ってもうないと思う……
それでも期待して待っている紗羅さんに何も言わない訳にも行かず
「藤臣さんは、私が学園に慣れたから執事らしく振る舞うようになったんだと思う…鷹護さんにはお昼休みに、今まで避けていたことを謝って仲直りしたの」
と言った。
紗羅さんを信用していない訳じゃない。
親友と言ってくれて嬉しいし、本当に心配してくれているからこそ、私が元気になってからしか訊いて来ない。
私も紗羅さんを親友だと思っているから、こうして話せるし。
他の人なら興味本位だと思って話さない。
「良かったですわ」
ニッコリと微笑んで紗羅さんが私を優しく見る。
「淑乃さんったら最近お元気そうにお見受け出来なかったのですもの…ご自分で解決なさったなんて、お顔に似合わずお強いのね…わたくしも安心しましたから、そろそろ厄介払いした執事候補生たちのところへ戻りましょう。体育祭の練習もございますものね」
コロコロと笑って紗羅さんは私と手を繋ぎ
「淑乃さん、早く参りましょう」
と私を引き摺って教室に戻った。
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