恋人は専属執事様Ⅱ
鷹護さんと館内へ入る。
トイレ以外の生理現象が分からなくて鷹護さんに訊いたら
「淑乃は知らなくていい」
と一蹴された。
生理現象と言ったけど本当は病気だと心配だから、後で鷹護さんと幼馴染みの河野さんに訊こうと思ったら
「河野にも他の人間にも訊かなくていい。俺は健康体だ、安心しろ」
と釘を刺されてしまった…鋭い……

改めて館内を見渡すと、壇上と左右の壁際に審査員席が設けられている。
2階にはギャラリーが沢山いる。
フロアには着飾った生徒がいて、みんな上手そうに見える。
緊張でお腹が痛くなる。
そんな私に気付いてくれたのか、鷹護さんがそっと手を繋いで
「大丈夫だ」
と言ってくれたから安心した。
軽く練習をしてステップやターンの確認をする。
練習の時は制服だったけど、ドレスだと勝手が違い少し踊りにくい。
でもそう感じたのは最初だけで、次第に慣れて楽しくなって来る。
練習が終わり鷹護さんに勧められて椅子に座った。
空調のせいで乾燥しているからと飲み物を渡してくれる。
今日は体育祭だからお世話なんていいのにと思ってそう言うと
「女性に気を遣うのは当然だ」
と言われて胸がチクリとした。
鷹護さんが過去に付き合っていた人にもこんな風に優しくしていたのか気になるなんておかしい。
今はダンスに集中しなきゃ。
集合がかかり、いよいよダンスが始まる。
鷹護さんが手を差し出して、私を椅子から立たせてくれる。
「淑乃は笑顔を保つことだけ気を付ければいい。俺を信じてくれるな?」
私に優しく微笑みながらそう言って、行くぞと鷹護さんは私の手を引いて歩き出す。
大丈夫、私には鷹護さんと言う頼もしいパートナーがいるから。
フロアで鷹護さんと向かい合って、曲が始まるのを待つ。
曲が始まり、鷹護さんとお辞儀をして手を取り合って体を寄せる。
タイミングを合わせ踏み込んで来る鷹護さんの足に合わせて私は足を引く。
踊り始めてしまえばもう周りは気にならない。鷹護さんのリードに任せて踊るだけ。
終わってしまえば、何だか短く感じるくらいだった。
鷹護さんにお礼を言うと
「淑乃とペアを組めて良かった。本当はこんなに綺麗な淑乃を他の奴に見せたくない」
なんて言うから、私は恥ずかしくて俯いた。
鷹護さんって天然のタラシかも……
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