恋人は専属執事様Ⅱ
ダンスが終わり、私はテニスコートへ走る。
紗羅さんの応援をする為に。
ドレスが邪魔だけど、更衣室が使えないから仕方ない。
テニスコートに着いて、フェンス越しに紗羅さんを探す。
「こんなところで何してんの?」
振り返ると…王子がいる!
宝井さんが乗馬服姿で立っている。
黒髪ショートカットになっても、王子オーラが出ているからすごい……
宝井さんも黙って私をジッと見ている。
そうだ、私はドレスを着ているから…意地悪を言われると思ったら……
「馬子にも衣装…じゃないか。淑乃は元から可愛いから。もっと胸元が開いてる方が俺の好みだけど、似合ってるな」
褒められた……よね?
「何、その顔…俺が褒めてやったんだから喜べ」
んー、上目線でそう言われましても…素直に喜べないかなぁ……
「淑乃」
急に呼ばれて宝井さんを見上げると…
パシャッ!
は?
宝井さんの手にはケータイが…
「淑乃のドレス姿ゲット」
ニヤリと口角を上げて宝井さんがケータイをポケットにしまう。
「えっ?ちょっと待って…今のナシです~!」
宝井さんにお願いしても結局削除してもらえなくて項垂れる。
「淑乃さん、来てくださったのね!」
後ろから抱き付かれ、デジャヴ…ジャメヴュ?を感じた。
「テニスコートも人が多くて、紗羅さんがどこにいるか分からなくて…」
振り向きながらそう言うと、紗羅さんが
「大丈夫ですわ!淑乃さんはドレス姿で目立ちますから、わたくしが見つけましてよ」
と言ってくれた。

紗羅さんは順調に勝ち上がって、見ている私も応援し甲斐があった。
面白かったのは、紗羅さんはボレーとスマッシュは必ず決めるのに、ストロークはサッパリだったこと。
何か性格がプレイに現れているかも…
無事に紗羅さんがブロック優勝したところで、私は何故か隣で一緒に観戦していた宝井さんに拉致された。

「どこに行くんですか?」
手を引かれながら訊くと
「いいトコ?」
と何故か疑問形で返された。
どんどんグラウンドから離れ、木々に囲まれ人も疎らになって来る。
ここで置いて行かれたら、確実に迷子になる!
必死に宝井さんの後をついて行く…手を引かれているけど。
急に目の前が開け、綺麗な厩舎があった。
宝井さんは私の手を引いたまま、ズンズン中へ進んで行く。
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