恋人は専属執事様Ⅱ
お嬢様、決断。

賑やかな体育祭が終わり、梅雨入りと共に中間試験が近付いて、空も心も晴れることはない。
これまで放課後は遅くまで練習だったけど、今は図書館で紗羅さんとお勉強会をして遅くなる。
体育祭での出来事が鮮明で、なかなか試験勉強に身が入らない上の空の私に、紗羅さんからメモが渡される。
『最近の淑乃さんは雰囲気が変わられましたけれど、体育祭で何か良いことがございましたの?』
体育祭で?何か良いこと?
またスッとメモを渡される。
『イベントは非日常ですから、いつもと違う雰囲気にときめきやハプニングは付き物ですわ』
…ときめき?
んー…確かにいつもと違う服装や一面を見て、格好良いとは思ったけど…
『みんな格好良いと思ったけど、それだけで何もないよ?』
と書いたメモを紗羅さんに渡す。
メモを読んだ紗羅さんはニッコリ笑って、またメモを渡して来た。
『格好良いと思われたことがときめきですわ!最近の淑乃さんは艶やかになられましてよ?』
艶やかって…
大体、みんな格好良いと思ったんだから、みんなにときめいたってことになっちゃうし!
『紗羅さんの思い過ごし!私はいつも通りだよ』
と書いたメモを紗羅さんに渡す。
あ、眉を顰めて不満そう…
ガシガシと紗羅さんが書きなぐったメモを私に渡す。
『鈍感』
否定はしないけど、この一言だけ渡されると地味にズシンと来るかも…
項垂れる私に更に渡されるメモ。
『魅力的な方ばかりで悩ましいですわね』
…確かに。
ときめきは一先ず置いといて、専属契約を交わす執事候補生を決めるまで残すところ2ヶ月弱。
今まで2ヶ月彼らと過ごし、それぞれの長所を知った私の悩みも眉間の皺も深くなる。
誰か1人なんて選べないけど、このままずっと4人に順番でって訳にも行かないし…
何より私の決断を鈍らせているのは、みんなからの好意…本当に私を大切にしてくれている想い。
それが痛い程分かるから、簡単な気持ちで決められない。
思い悩んで益々上の空になる私に、紗羅さんからメモが渡される。
『赤点は60点からですわよ』
それは61点以上取らなきゃ追試ってことですよね?
赤点なんて取った日にはお祖父さんに呆れられちゃう。
私を引き取って何不自由ない生活を与えてくれたお祖父さんの期待は裏切れない。
最優先課題を赤点回避に変更です…
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