ダイスキ熱愛先生!~溺愛教師の不純!?な個人授業~

通ずる想い

「…オッホン」

しばらく抱き合ったままでいたが、そのしゃがれた咳払いでハッと顔を上げた。
サラリーマンらしい中年のハゲオヤジが俺たちの横を通り過ぎながら、呆れたような視線を向けている。




……しまった。

ここが街中、というか住宅街だということを忘れていた。俺は別にいいが、桐島のご近所さんが通るかもしれない。まずい…。


ようやく周りの状況が考えられるようになってきた。ここじゃだめだ。それに、よく見ると桐島はラフな格好のままですごく薄着だ。もう秋だし風も冷たい。抱き締めているとはいえ、寒いに決まってる。

……もしかして、震えているのは寒いからなのか?てっきり感激しているんだとばかり思っていたが。



「桐島?ここじゃまずいから、移動しよう」

腕の中にいる彼女に声をかけると、その言葉で我に返ったように桐島もハッと顔を上げた。しかもあたふたと俺から離れようとする。


「ご、ごめんなさい!!帰りますね…!!」

「ちょっ…!待てっ!おい!!離れんな!!」


のけぞるように身体を離そうとする桐島を、離さまいと必死で掴む。通行人が怪しくこちらを見ていた。おいおい!!これじゃまるでいつかの痴漢みてえじゃねぇか!!


「と、とにかく!歩こう!な?」


パニックになりかけている桐島の腕をとり、行く先も決めないまま歩き始めた。

< 221 / 479 >

この作品をシェア

pagetop