屋根ウラの天使



「分かった!ちょっと見てくるから待ってるんだぞっ

ウロウロ動いちゃ駄目だぞっ」


「はーい」

この時ばかりは大人しく天使の言うことを聞く。

天使はすいーっと、青い空に向けて登って行って、

本堂のまわりや林の向こう、お寺の境内をすみずみまで飛び回ってくれた。

けっこう広いお寺だったから、すぐに天使の姿はみえなくなって、

また少し不安になった。



しばらくすると、天使が急いで私のところに戻ってきた。


「かおる、やっぱり同じ班にいた子たちは見当たらなかったぞ、

急いで見てきたのか、天使は肩で息をして、

心配そうに私を見た。

「うそ…」

私がいなくなったのに

気づいてない?

ううん

そんなはずない。

きっと先生を誰か探しに行ったんだ…。


「先生とか、…他の班の人でもいいんだけど、いないかな?」


だんだん焦ってきた。

必死で、天使にすがる。


「うーん、このテラの壁の中しか見てきてないから…

もうちょっと先まで探してくるか?


「うん、お願い…」

下手にこっちから動いて探しに行ったら

行き違いになるかもしれない…


「ちょっと待ってろよっ

すぐに見つけるからなっ

大丈夫だぞっ」


天使は私の肩をポンポンと叩くと

また空に旅立って行った。

年下なのに

ちゃんと頼もしい男の子に見える

まだ不安だったけど

ちょっと気持ちが楽になった



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