屋根ウラの天使



天使はテラの正門まで飛んできた。

門の前は大きな通りになっていて

かおるの学校の生徒に限らず、

たくさんの人通りがあった。

「誰か誰か…」


かおるのいる場所にすぐに戻れるように、

あんまり遠くには行けない。


「ボクまで迷子になったら、かおるが大変だぞっ…」

つぶやいた時、

見たことのある男の子が目についた。

他のクラスメートと、やはり5人の班で行動中のようだ。

近くにはかおるの学校の先生らしき人も、生徒たちを見守っていたが、

天使は見えないし、

大人は信じてくれないだろう。

トモキの兄ちゃんなら!

こないだボクのことも分かってくれた。

「おーい、兄ちゃん兄ちゃん、かおるが!」


羽ばたくと、すいーっと下降して、ハルキの元へ向かう。


「あ、聞こえなかったんだぞ…」


天使は意を決して、

ハルキの肩をトントンと叩いた。

「トモキの兄ちゃん、

かおるが迷子だ、助けてやって!」

トモキは初めは気のせいか、と、

見えない何かに叩かれた肩に手を持って行って

考えているようだった。


天使は必死で、

ハルキの手にしていたノートを掴んだ。


無理矢理ノートを奪い取ると、

そのまま、元きた寺の門まで飛んで行った。


「うわぁっ、ノートが!」

ハルキは慌てて追いかける。

「どうしたんだよっ」

それに気付いた、同じ班にいた本田も

後を追いかけた。


2人に気付いた残りの班員と、側にいた先生も追いかける。



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