屋根ウラの天使



走りながら、ハルキは気付いた。

(もしかして、藤田の天使か…?)

ひとりでに宙を舞う

弟の赤いゴムボールを思い出す。


(てことは、藤田に何か…)


ノートを追いかけて

寺の本堂の裏につくと

心細そうにしゃがんでいる、かおるを見つけた。



*****


「藤田!」


しゃがんでうつ向いてた顔を上げたら

ハルキくんと本田くんが、走ってくるのが見えた。


「ハルキくん!本田くんも!」


「藤田、お前…また迷子かよ。

相変わらずどんくさいな。」


本田くんの毒舌にも

今はほっとしちゃう。

このまま迷子になったら先生にも怒られちゃうし、

せっかく私を同じ班に誘ってくれたクラスメートも怒られちゃうかもしれないし、

何より

一人で心細かったから。


「あ、ありがとう…夢中でノート取ってたら、

皆とはぐれちゃったみたいで…」


こぼれおちそうな涙を堪えて、

やっとのことでお礼を言う。

天使はノートをそっとハルキくんの手に戻した。

もちろん、本田くんに気づかれないように。



少し遅れて残りの生徒と先生が追いついてきた。

先生はハルキくんのクラスの担任の先生だった。


「まあ、藤田さん。

あなたの班はどうしたの?

一人かしら?」


隣のクラスの担任も、

優しい女の先生。


すぐに私の担任に携帯電話で連絡を取ってくれた。


「連絡しておいたから、大丈夫よ。

もう自由行動も終わりで、宿に戻って集合する時間だから、

先生と一緒に戻りましょう」


先生の引率で、

ハルキくんたちの班と一緒に戻ることになった。

天使は頭上をついてきて

私たちが路線バスに乗り込むと、

姿が見えないのを良いことに

またバスの上に無賃乗車してついてきた。


「天使、旅行に一緒に来てるの?」

バスの中で、

ハルキくんはヒソヒソと話しかけてきた。

私はハルキくんを避けてたから、

何だか久しぶりに話した気がした。

でも、ハルキくんは、

そんなこと気付いてない風だし

いつも通り、素敵な笑顔を向けてくれる。

「天使、

俺のノートを奪って

藤田さんの場所を教えてくれたんだ」


「そっか、ビックリしたでしょ。

本当に、ごめんなさい」



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