嘘つき①【-ハジマリ-】
…っ!!
一瞬怯んだけど、もーこの際仕方ない。
「バカはバカ!アホはアホです!」
素っ気なくそう言い切って部長から目を逸らす。
もーいやだ。すでに冷静になった頭は早く謝れと信号をうるさい程送るのに。
「ふはっ」
沈黙を破ったのは、やっぱり部長の笑い声。
「すまないな、冴木があんまり可愛いから」
「はいはい…って…え!?」
部長は相変わらず整い過ぎた顔で、笑う仕草に悔しいけど見とれる位、やっぱり、綺麗。
声を上げて笑うんだ、って感心してる場合じゃない!!
「怒るな、話を聞きなさい。」
部長は低すぎない優しい声で淡々と囁く。
ほんとに、まるで、何事もない口調過ぎて、拍子抜けになる。
「冴木、…すまなかった」
あたしの瞳の辺りを部長の指先がなぞる。
この時、初めて涙が溜まってた事に気付いた。
冷たい瞳が何を考えているのなんか分からない。
「何でも言う事聞くから許してもらえないか」
だけど、この恐ろしく綺麗な人は、あたしにそう言った。
それが始まり。