嘘つき①【-ハジマリ-】
「冴木、聞いてるのか?」
線の細い髪が光の反射で薄いブラウンに色を変える。眼鏡の奥に理知的な瞳。
「はい。明日までに企画書、提出します」
あたしは正しい姿勢できっちり斜め45度頭を下げる。別に、角度なんて何度だっていいんだけど。背筋さえ伸びていたらきっと綺麗に見えるから。
「よろしく」
部長は僅かに目を細めてゆったりとした口調で声をかける。
…あー、この顔が好き。
低すぎないこの声も好き。
…指に光るそのリングでさえあなたを形作る物なら何だっていい。
そう思わずにはいられない。