嘘つき①【-ハジマリ-】
「…熱でもあるのか」
「なっ…!なに、」
「顔、赤いが?」
「気、気のせいです」
「そうか?」
駄目だ、泣きそう。意味分からないけど。恥ずかしくて。部長の横顔ならまだマシだけど、あたしを見る近距離の車という密室は、逃げ場がない。
端正な顔立ちは僅かに眉を上げる。
この距離で意識を保っていたあたしはえらいと思う。
「冴木、予定変更だ。このまま帰さない」
熱が、上がっていく。
その言葉の意味なんて、分からない。
どうしてこの人は、こんなにも拒めない。