嘘つき①【-ハジマリ-】
あたしの横に当然のように座る彼は、テレビのリモコンを触って、大きな液晶パネルが本来の活動を始める。
「部長…」
あたしは未だにこの場所にいる状況に慣れないのに。
「なんだ?」
あたしは溜め息をついて、すぐに吸い込む。
「この間の事なんですけど、忘れて下さい」
この期に及んでこの言葉は空気を全く読まないけど、それ以外に見つからない。
「…忘れて?いいのか?」
部長の眼鏡ごしの目線にクラクラする。
「い、いや、忘れ、」
あたしは何を言おうとしてるんだろ。っていうか、部長は何を言わせる気で、そんな顔、駄目だ。クラクラする。
あたしが、次の言葉を吐く前に、
部長がゆっくりと席を立つ。
レンズ越しの視線が離されて、あたしは腰を抜かしたみたいに座り込んだ。