嘘つき①【-ハジマリ-】
部長はあたしの手首を掴む。
彼の舌がピクリと動いて、奥に、深く、求める。
絡まる舌がゆっくりと糸を引いて、自分の口からまるで他人みたいな甘い吐息が漏れた。
ソファに押し付けられる様に掴まれた腕は力強いのに、優しくて、違う意味で身動きが取れない。
だって、近距離過ぎる。
キスで塞がれた口は、身体を触れられる度波打つ。
甘くて、とろけそうなキス。
諦めた様な、部長の冷めた眼差しが、益々身体を熱くさせるなんて、自分でも自分が分からない。
吐息は漏れて、キスだけで多分、こんなに感じた事、ない。