嘘つき①【-ハジマリ-】
「時計、ないと困りませんか?」
「感覚で分かる」
「部長、どんな感覚してるんですか」
「さあ?」
飄々とした態度に、この人ならあり得るかもしれないと思う。
「二人の時は『部長』はやめろ」
「え?」
「さっき、名前で呼んだだろ」
聞こえてたんだ。好き。なんて言わなくて良かった。
「…部長は部長です」
「確かに、あの甘い声ならそそらなくもないな?」
部長が理知的な瞳を細める。
あたし、どんな声を出してたんだろう。
また頬の熱が上がる。
それに、
『2人の時』ってどういう意味なの?
期待してもいいですか?