嘘。『彼』
私は笑顔でタッタと席を立った。



「はゃくね〜」


ヘラヘラ鼻の下を伸ばしながら手を振ってきたので、軽く微笑んで会釈する。



「五番、時間、十分前にしか戻らないから。」



私はボーイの耳元で囁いた。




「次、九番テーブルお願いします。」




ボーイは、コクリと頷くと、次の指示を出す。





「失礼しまぁす。沙良です。」




私はダウンサービスをして笑顔を見せた。




「あっ沙良ちゃん!社長!来ましたょ。」





私はゆっくり席に着く。



「失礼します。」



私は社長と呼ばれていた、男の隣に行儀よく座ると、静かに微笑んだ。



「お疲れ様っ。」


そう一言言い、タバコを持つ手を見て、速くタバコに火を付けた。



「ぉう。」



そう一言だけ言うと社長は深く煙を吐いた。



この社長は週四くらいのかなりのペースで来る。



そして静かに高級ブランデーをゆっくり飲むのだ。



行儀には少しうるさくて、この人の前では特別に背筋を立てなくてはならない。



人形のように、変わらず微笑み、隣にいる。






そう。私はただの飾り物。


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