嘘。『彼』
「ちゃんと付き合う?」



そう言われたのは、雅人が二回目に家に来た時。



「ぇっ…」



嬉しさと戸惑いで私の頭は混乱した。



ベッドの中で軽く頷いて雅人をギュッとだきしめる。


そしてタバコを吸う雅人の後ろ姿に呟いた。





「私…雅人が思ってる様な女じゃなぃょ…」



心底自分が嫌いな私は、雅人に嫌われるのが怖かった。




『いいお客さん』



ただそう思われるだけでも良かったから。



彼女っと言う響きがイマイチピンとこない。



その日から、私の中で大きな闇がグルグル周り続ける事となった――




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