指折り★Holiday
遠くの方で聞こえるチャイム。
日の当たらない廊下が、
あたしの緊張を引き立てる。
見つめた譲輝くんは、
さっきと何も変わらない様子で。
あたしだけが、
そこにある存在のよう。
「あの・・・・・・・」
返事のない譲輝くんを見かねて、
恐る恐るもう一度声を掛けた。
「譲・・・・・・・・」
「忘れろ」
あたしの声とかぶるように、
譲輝くんの声が重なる。
「今考えてる事、全部忘れろ。
俺の携帯も拾わなかったし、
携帯の中身だって見ちゃいない。
今持ってるその“確信”も、
全部なかった事にしろ」
こっちが目をそらしたくなる様な、
――――強く鋭い視線。
さっきの人と、
同一人物なんて思えない。
「じゃあ、ほんとに譲輝くんが・・・」
「そうだよ、お前の思ってる通り、
―――――俺が、柚木モモだ」