指折り★Holiday
自分の真正面を向いたまま、
確かにあたしに投げかけられた言葉。
無視、じゃないんだ・・・・・
無視されると思ってたから、
話し掛けられたことに驚いた。
恐る恐る譲輝くんに近づくと、
譲輝くんは座っていた場所を、
真ん中から左端へと移した。
“座っていいよ”
そう言われてるみたいで、
なんだか嬉しかった。
「お、お邪魔します」
一応、譲輝くんに断ってから、
あたしも右端に腰を下ろす。
横目盗み見た譲輝くんは、
ただまっすぐ前を向いて
人の流れを見ていた。
「今日は、その・・・ごめんなさい。
譲輝くんの嫌なこととか言っちゃって」
膝の上で、ぎゅっと手を握る。
「でも、あたしは嬉しかった。
柚木モモの書く小説が好きだったし、
何よりその人がこんなに近くにいることが嬉しかった。
だから、譲輝くんは何も気にしなくていいと思う。
笑うとか、軽蔑とか。
そんなのちっとも思ってないから」