指折り★Holiday



いつもは眠たそうに開けられた目が、
今はパッチリと存在を主張している。



あんまりずっと見てくるもんだから、
思わず視線を外してしまった。




「えと、どういう状況で言われたの?」




たどたどしくならないよう、
精一杯普通に切り出した。


そんなあたしに気付くこともなく、
譲輝くんはすらすら言葉を並べる。




「俺。ちっちゃいとき、
自分の名前が嫌いだったんだ」


「えー、かっこいいじゃん」


「同じ幼稚園にさ、
“ゆずちゃん”っつー子がいたんだよ」


「あ、わかった。
それでからかわれたりした?」




まぁねって言いながら、
苦笑いして元の体勢に戻った譲輝くん。



「毎日、毎日。
ゆずきちゃんゆずきちゃん言われて。

かーさんに聞いたら、
親父が名前考えたって言うから詰め寄ってさ。

したら言われたんだよ」



視線だけあたしに向け、
どこか嬉しそうに




「譲輝の由来は“譲らない輝き”だ。

お前もなんか1こでも、
誰にも負けないもん作れってな。

親父にそう言われたら、
なんかこの名前がかっこよく思えてきたよ」



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