指折り★Holiday



“もう帰ってる”



「そ、そっか」


「早く着替えてきなさい」



そう言ったお母さんに、
1度だけ頷いて自分の部屋へ向かう。




いつもと変わらないはずの階段が、
妙に長く感じた。




自分の部屋に行くには、
必ず書斎の前を通らなくちゃいけない。




書斎の前の廊下だけ、
早足で通り過ぎる。



部屋のドアノブに手をかけて、
中に入ろうとした。




だけど、




“今なんじゃないの?”



心のどこかが、
確かにそう叫んだのがわかった。



もう戻って来ないと思ってた、
幼い頃の暖かい家族。



バラバラになってしまった絆を、
戻すのは今なんじゃないか?



ドアノブから手を離し、
早足で通り過ぎた場所へ自分から向かう。



最近、いい子にしてたから
変な自信が生まれてしまった。



< 61 / 122 >

この作品をシェア

pagetop