指折り★Holiday
“もう帰ってる”
「そ、そっか」
「早く着替えてきなさい」
そう言ったお母さんに、
1度だけ頷いて自分の部屋へ向かう。
いつもと変わらないはずの階段が、
妙に長く感じた。
自分の部屋に行くには、
必ず書斎の前を通らなくちゃいけない。
書斎の前の廊下だけ、
早足で通り過ぎる。
部屋のドアノブに手をかけて、
中に入ろうとした。
だけど、
“今なんじゃないの?”
心のどこかが、
確かにそう叫んだのがわかった。
もう戻って来ないと思ってた、
幼い頃の暖かい家族。
バラバラになってしまった絆を、
戻すのは今なんじゃないか?
ドアノブから手を離し、
早足で通り過ぎた場所へ自分から向かう。
最近、いい子にしてたから
変な自信が生まれてしまった。