しあわせ音色
1センチ・ポート
1 ふたり
わたしが紗江に出会ったのは、ちょうど今日みたいな気分の日だった。
美咲がわたしをうらぎった日。
「紗江!久しぶり!」
「昨日会ったって」
「わかってるよ。なんとなく。紗江に会わないとわたしの今日は始まんないの」
ぷぅ、とほうをふくらませてすねてみた。紗江は半分こまったような笑みを返す。半分は笑顔。
紗江は笑う。
「あ、バス来るみたい」
二人はバス停に走った。ほどなくして、緑の装飾が施されたバスが来た。
二人を乗せてドアが閉まる。乗客はわたしたちを入れて6人。
車内は静かで、わたしは話をしなかった。紗江も話しかけてこない。
沈黙の空間を運ぶバスは、彼だけが大きな息を吐きながらガタガタ道をひた走る――そんなことを考えながら、わたしは目を閉じた。
美咲がわたしをうらぎった日。
「紗江!久しぶり!」
「昨日会ったって」
「わかってるよ。なんとなく。紗江に会わないとわたしの今日は始まんないの」
ぷぅ、とほうをふくらませてすねてみた。紗江は半分こまったような笑みを返す。半分は笑顔。
紗江は笑う。
「あ、バス来るみたい」
二人はバス停に走った。ほどなくして、緑の装飾が施されたバスが来た。
二人を乗せてドアが閉まる。乗客はわたしたちを入れて6人。
車内は静かで、わたしは話をしなかった。紗江も話しかけてこない。
沈黙の空間を運ぶバスは、彼だけが大きな息を吐きながらガタガタ道をひた走る――そんなことを考えながら、わたしは目を閉じた。