My Sweet Sweet home
「こいつ、綾。あっこれが前に話した妹のゆかね。」
「初めましてゆかです。」
先週月曜日3講、広い講義室。その1番後ろのある1角での出来事。
「そうなの。ほんとに美人な妹さんねー。年下に見えない。」
きた。いつもの拓兄の彼女とたちの言葉となんら変わらない。
「でもあたしたち血は繋がってないんです。」
念を押すように、いかにもそれが重要であるかのような顔であたしが言う。
「拓海ー。ちょっと来いよ。」
ちょっとわりぃってあたしたちに告げてから、拓兄は友達らしき人におぉどしたって顔で近づいていった。
「・・・ええ。拓海から話聞いてたわ。すごく仲がいいんですってね。血が繋がってなくても本当の妹だって言ってたわ。昔から自慢の妹だったって、一生大切な妹だって言ってたわ。」
その笑顔の裏には、明らかに女の作為があった。
あたしの中の妹ではなという気持ち、女の部分を感じとってこの女は逆に、あたしが妹である事を強調した。
拓兄が、本当にそこまで言ったかどうかは定かではない。
もともと自分とか自分の身の上話をするのが好きではない人だし、一生大切、なんて芝居がかったようなことを拓兄がこの女に話すとは思えない。
まぁどっちにしろ、互いに笑顔を崩さない中で、女の無言の火花が散ったことはだけは明らかだった。
ちょうどその時拓兄が戻ってきた。
「すごくかわいい妹さんね。拓海の話してくれた通りの妹さんだった。あたしたちも姉妹みたいに仲良くなれそう。」
またしてもご丁寧に”妹”を強調してくださった。